光輝さんのお漏らしにまつわる体験談
俺がやってきたその旅館は、山の中の細い道を30分ほど登った先にあった。
名前は「湯張り荘」。お湯が張っていそうでいいけど、不思議な名前だ。
外観は古く、瓦は少し剥がれ、ひらがなで書いたらしい看板は「ゆばり荘」とある。
就職前の最後のひとり旅で、たまたまネットで見つけた「昭和風の秘湯宿」に泊まることにしたのだが。
チェックインして五分で悟った。ここ、完全にハズレじゃないのか。
廊下の照明はやたら暗いし、部屋の時計は止まってるし、部屋の隅にはなぜか“木製テレビ”。
布団もふかふかじゃなくて「ぺしゃん」。温泉も「源泉かけ流し」と書かれていたが、出てくるお湯がぬるい。浴びていたら風邪を引きそうだ。
でも、まぁいい。これも旅の味だ。
風呂上がり、浴衣の帯をゆるめて布団に寝転んだ。
「はぁ……静かだな」
山の夜は、虫の声しか聞こえない。
スマホの電波は一本も立たない。
時計も止まってるから時間もわからない。唯一の明かりは、天井の裸電球ひとつ。
することもないし、もう寝るしかない。そういえば受付の男に変なことを言われたな。
「お客さんは、ええと、一番安いお部屋でしたな」
「あ、はい、そうです。予約サイトで一番安いプランにしたので」
この受付、言わんでもいいことを言いやがると思った。
「そうなると、ちょっと部屋で、その、出すだけかと思いますが、構いませんな」
「???」
何がだろうか。一瞬不思議に思ったが、俺にはピンとくるものがあった。
「ああ、もしかして、幽霊が出るとかってことですか? 古い旅館だし、一番安い部屋は幽霊が出るっていわくがあるってことなんでしょ」
「まあその、幽霊は出ますが、その、出すだけかもしれないものですから、それ以上はあまり」
「わかりましたわかりました。これもネタになるかもだし、構いませんよ」
「そうですか。では、こちらがお部屋の鍵でございます」
なんとなく不思議なやりとりだった。俺は思い出しながら、少し眠気を感じ始めた。
と、そこへ。
すうっ、すうっ。
障子の向こうから、妙な音がした。
「………風か?」
違う。足音だ。ゆっくり、確実に近づいてくる。
嫌な汗が首を伝う。
「ちょ、ちょっと待て。これ、まさか……」
本当に幽霊なのか。やめろやめろやめろ!
その瞬間、障子がスッと開いた。
「ひえっ」
そこに立っていたのは、白装束姿の女だった。
しかも、頭には三角巾。
完全に「幽霊界の正装」である。年は俺より少し上に見えるが、はっきり言って美人だ。年上のお姉さんって感じで、幽霊でなければ話しかけたい。
「ふふっ」
なんとその女の幽霊は、俺を見て、にっと笑ったのだ。
俺は驚いて言葉が出ない。誰かに助けを求めるか、部屋から出るか……いや、そもそも相手が部屋の入口にいるのだ。そこが唯一の出入り口である以上、俺は出られない。
そうこうしているうちに、女が部屋を歩き回り始めた。
足は裸足である。幽霊だが足はあるようだ。
「……ここにしましょう」
女幽霊はぽつりと呟く。そして俺の布団の真正面に座った。
「な……えっ?」
しゃがんだままゆっくりと足が開かれる。白装束の下は、ノーパンだった。
ぱっくりと開いたおま○この上には少し黒々とした陰毛が見える。
「嘘だろ……」
あっけにとられながらもちょっと勃起しかけている俺。女幽霊の股間を凝視している。
当の幽霊は足を組み替えている。ここでストリップでも始めようというのか。その間も視線は俺の方を見ている。
俺が雰囲気に飲まれ始めたときに、女が少しぷるぷると震え始めた。
「あ……♡ あっ、あうっ♡」
様子がおかしい。俺は膝立ちになって女幽霊の方へにじり寄る。
「出るっ、出るうっ♡ あふっ、ああああぁああっっ♡♡♡!!」

ブシャアアアアアッ!
女が勢いよくおしっこを漏らしたのだ。
「わぷっ!」
女の股間に顔を近づけていた俺の顔面におしっこの放水が直撃する。
口の中に入った分を吐き出すが、塩辛くて苦い味が口内に残る。
「あうっ、ああっ♡ はあうぅっ♡」
気持ちよさそうにその場でお漏らしを続ける女幽霊。白装束が黄色く染まり、年季の入った畳がおしっこで濡れていく。
大惨事だ。
「ふあっ、ああうっ♡」
ひとしきり出し切ったらしく、再びぷるぷると女幽霊が震える。しずくがポチョポチョと水たまりの中に墜ちた。
そして女はおしっこまみれの白装束を着たまま、立ち上がった。
「あ、あ……」
俺は何を言えばいいのかわからない。ただただ、女が来たときと同じようにゆっくりと歩いて帰っていくのを見送るのみなのか。
そう思ったとき、幽霊がこちらを振り返った。
その顔はさっきとまるで違って恐ろしく……
◇◇◇
翌朝、俺は布団の中で目が覚めた。
いつの間に眠りに落ちたのかを覚えていない。
昨日の夜のお漏らしされた跡が畳からは消えていた。
「絶対、畳も取り替えなきゃ駄目なぐらいの量だったのにな」
口の中を確かめるが、もはやおしっこを飲まされた感触はない。
やはりあの女は、幽霊だったのだろうか。
それも気になるが、俺は受付に確認せずにはいられない。
帰り支度をして部屋を出る。朝食は出ないので、どこか外で食べることになる。
受付には昨日チェックインしたときと同じ男がいた。
「ねえ、昨日の夜さ、幽霊が出たんだけど!」
「ああ、はい、そうですね。事前にお知らせしたとおりです」
「いや、それはそうなんだけど、おしっこ出してたぞ! しかもかなりの量の!」
俺が早口でまくし立てたが、受付の男はきょとんとした顔だ。
「はい。出すだけかもしれないとお伝えしましたよね。お客様もそれで構わないとのことで」
「いや、幽霊が出るだけならまだしも、おしっこをあんなに出されるなんて聞いてない!」
受付は首をかしげる。
「お客様、うちの旅館の名前はご存じですよね」
「……湯張り荘でしょう? お湯を張ると書いてゆばり。温泉旅館に合ってる」
「昼間はそうですが、夜はもう一つの意味になるのです。つまり、ゆばりとは、お小便のことなのですよ」
呆然とする俺に、受付はわざわざ自分のスマホで検索した画面を見せてくれた。
『ゆばり【尿】尿。小便。』
これでは、認めざるを得なかった。ここがどういう旅館なのか、わかる人にはわかっていたのだ。
「幽霊の気分次第ではありますがね。料金の安い部屋ではお漏らしだけですが、もう少し上のプランだと、お漏らしの先がありますから」
もはや言葉も出ない。
「す、凄いですね。俺の負けです。帰ります」
「お気を付けて」
俺は代金を払って旅館を出た。
今日もいい天気だ……また、ここにいつか来よう。
最後の幽霊の顔は怖かったが、今度はもうちょっといい部屋を頼もう。
俺の中の新たな性癖が、目覚めつつあった。



コメント