おしっこ我慢キャットファイトリング20-1:集まって予選会(前編)

「へえ、ずいぶんとたくさん集まったものだね」

ミリアが呟く。今日、ドームの地下で「おしっこ我慢キャットファイトリング選手権大会」の予選会が行われる。本戦に出場できるのは16人のみ。しかしここに集まっている人数は優に50人は超えている。
彼女らは広い部屋に通されており、そこで呼ばれた順に隣の部屋に移動して予選の審査を受けることとなる。机とパイプ椅子がずらっと並んでおり、部屋の外には自販機があった。

「見たことのある顔もいるね」

隣のカオリが言う。ミリアもキョロキョロと周囲を見回すと、確かに対戦経験のある選手もいた。ミリアを滅多打ちにした骨法使いの種橋幸音や、先日激闘を繰り広げた頼則セシルもいる。カオリは以前に敗北した女子柔道家のシャウナ・イラズマスの姿を見つけ、向こうから見つからないようミリアの影に隠れる。

「隠れることないのに。ここは控え室だよ。戦うわけじゃない」

「う、うん……」

ミリアはそう言うが、どうもカオリの側に苦手意識があるようだ。一方のミリアは幸音と目が合うとニッと笑って会釈したりしている。幸音の方は無表情で礼をしたのみだったが、対戦後のしこりなどなさそうだ。
そこへ部屋のスピーカーから音声が流れてきた。大会運営によるアナウンスだ。

「これより予選会を始めます。係の者が2人ずつ名前を呼びますので、呼ばれた方は黒いドアから出て、あとは案内に従ってください」

簡単な説明があり、キャットファイトリング運営のTシャツを着た女性が扉の近くに立った。そしてマイクで2人ずつ名前を呼んでいく。水着姿の女性とタンクトップの女の子が部屋から出た。前者はどういう意図の服装なのかわからないが、それもファイトスタイルなのだろうか。
以降も3分おきぐらいに選手の名前が呼ばれていき、少しずつこの部屋の人数が少なくなっていく。最初のうちこそ他の選手の様子を伺っていたミリアだが、20分ほど経つとそれにも飽きてきた。審査内容の共有防止のためか、スマホの持ち込みが不可である。ミリアはぼーっと床や机の木目を見て時間を潰していた。
カオリはまだ落ち着きなく周囲を見回している。緊張しやすい性質のようだった。ただそれはカオリだけではないようで、立ってうろうろしている選手や、シャドーボクシングをその場で行っている女もいる。

「カオリ、ちょっと落ち着いた方がいいよ。ほら、背中さすってあげる」

「んっ……♡ ありがとう、ミリアちゃん」

仲睦まじい2人。緊張感のある控え室でそこだけが和んだ空気となった。

「しかしまだ順番は来ないでござるか。100人もいると審査だけでも時間がかかるのかもしれませぬな」

「うわっ、あんたまた急に」

突然後ろから話に割り込んできたのは、失禁くノ一の忍花である。ミリアが驚く。カオリに敗れて以来、ちょくちょくミリアたちの近くへ寄ってくるようになった忍花。友人付き合いぐらいならばよいが、先日は2人のレズセックスの最中に部屋の中にまで入ってきて驚かされた。もっともその流れで3Pへと発展してしまったのであるが。

「ふうむ、どういった審査でござるかな。まあ、これまでの傾向を分析するとおしっこ関係の審査であることは想像がつくでござるけど」

「話の主導権を握ろうとするなよ。まあ、待ってるのも暇だからいいけど」

ミリアは渋々このくノ一の同行を許す。カオリも苦笑いだ。そうこうしているうちに種橋幸音や頼則セシルの名前が呼ばれて、ドアの向こうへと姿が消えていく。審査方法は事前に明かされてはいないため、対策のしようがなく当日時点の実力勝負という触れ込みだった。それは忍花だけでなくミリアやカオリらも同じだ。

「出て行った人たちも、どういう選び方かわからないけど2人ずつ呼ばれてるよな。まさか向こうの部屋にリングがあって、そこで戦ってみろなんて話なんじゃ」

「うーん、もしかしたら私とミリアちゃんが戦ったりするのかな……待ってるうちにだんだんおしっこしたくなってきたんだよね」

カオリが不安そうな顔をする。予選会の日ということだが、普段のキャットファイトリングの試合と異なり事前に摂取する水分量は指定されていなかった。そのためにミリアもカオリも平凡な一日並みに飲み物を飲んでいた。

「ちょっとトイレに行ってこようかな」

カオリが部屋を出ようとする。名前を呼ばれた選手達が出て行くドアとは反対側だ。だがそれを忍花が押しとどめる。そして首を振った。

「残念でござるが、あちらのトイレは閉鎖済みでござった。警備が2人トイレの前で仁王立ちしており、側には看板を持った者が1人。そしてそこにはこう書かれていたのでござる。予選の関係で使用できません、と」

なかなかもったいぶった言い方をする忍花だ。しかしそれが事実であるならば、ますます予選の内容もおしっこ関係である可能性が高まった。戦いでのおしっこ我慢や、驚かされたときのおしっこ我慢、寒い中でひたすら耐えるおしっこ我慢などが考えられる。

「うー、それなら早く予選してほしいよぉ、漏れちゃうよ、んんっ♡」

我慢するために太ももをこすり合わせるカオリ。やたらとエロチックで、無機質な控え室に似つかわしくない声が出る。ミリアは今晩のことを想像して少しあそこが濡れてきそうになる。ちょっと手を股間に伸ばしてみると湿り気を感じた。

「えーと次、西堂カオリさん、古鉄コタムさん」

カオリの名前が呼ばれた。もう1人の方はどういう選手なのかもわからない。長髪の女が立ち上がり、呼ばれた方へ歩いて行った。カオリは複雑な表情だ。

「うう、じゃあ、行ってくるね。終わったらファミレスで待ち合わせだよ」

「カオリならきっと我慢できるよ。また後で会おう」

カオリの手を握るミリア。ここ数ヶ月で2人の精神的な結びつきはかなり強くなっていた。忍花にからかわれるかと思いミリアはその姿を探すが、いつの間にかいなくなっていた。
そしてカオリがドアの向こうに姿を消す。

「ふう、これで安心でござる」

カオリが出てさらにもう6人が呼ばれた辺りで忍花が戻ってきた。先ほどまで順番待ちで少し苛立っていたようだが、今はずいぶんと余裕そうな顔をしている。ただミリアからあえてその事情を尋ねることもない。

「では次、武方ミリアさん、曲山忍花さん」

「うへっ」

ミリアは声を上げてしまった。忍花と一緒の番になるとは。2人で戦えという展開になったら、忍花はなかなかの強敵だ。そういう展開にならないことを願う。
チラリとこのくノ一の顔を見ると、ニヤニヤとした笑みを浮かべていた。どんな審査であろうと来るなら来いという自信を感じた。
2人で順にドアから出る。そして廊下の先にある部屋に入るよう促された。

「あれ……?」

入ったのは小さな小部屋だ。机が置かれておりその向こうにはキャリアウーマン風の長い黒髪の女性が座っている。パンツスーツ姿で、入ってきたミリアたちをじっくりと見た。ミリアはまるで面接にでも来たような気分になる。これでは戦いよりも恐ろしいかもしれない。一気に背筋が寒くなった。
しかし面接だとすると、机の上には似つかわしくないものがあった。紙コップである。

「あの……」

「座る必要はありません」

机の前に並んでいた椅子に座ろうとするミリアだったが、黒髪の女性に止められた。

「今から審査の内容を説明します」

唐突に説明が始まった。ミリアたちは立ったままそれを聞くことになる。

「この部屋を出て左側に女子トイレがあります。あなたたちにはこの紙コップに自分におしっこを取ってきてもらいます」

「け、検尿って事ですか」

思わず口を挟むミリア。戦いが始まるわけでも、面接でもない。これが審査ならばなんてことはない話だ。すでに勝利の予感がした。

「いえ、まあ尿自体の検査はしますけれど。この審査で確認したいのは、トーナメントで『魅せる』ことができるかです。お客様はみなさん選手達の放尿を見に来ている方がほとんどです。もちろん純粋に異種格闘技の戦いを見たいという方もいらっしゃいますが、そういう方は別団体へと掛け持ちのこともあります。この『おしっこ我慢キャットファイトリング』の独自性はやはり女性のおしっこ。そこを『魅せる』事ができなければ話になりません」

黒髪の女性が雄弁に語る。ミリアとしてはわからないでもない。これまで何度もリング上で敗北してきたが、ミリアが漏らすたびに観客から大きな歓声が沸いていたことも思い出される。大技を決めたときよりも、お漏らしの方が喜ばれたのは事実だ。

「今回のトーナメントは大きな祭典ですが、選手の組み合わせ次第で格闘技の試合が凡戦になってしまうこともあり得ます。互いに膠着状態に入って動きがないとお客様の不安も募ります。そういう状況で会場を沸かせる為に必要なのは何か。そう、おしっこの披露です」

「な、なるほど」

どうも運営側もなかなか考えているようだった。膠着状態であっても、片方がおしっこを漏らし始めてそれを恥じて泣き出しでもしたら、強烈なマニアは盛り上がるはずだ。おしっこはどんな展開でも一変させる力を持つということだろう。

「前置きが長くなりました。ではこちらの紙コップにおしっこ入れてきてください。ただし条件があります。先ほども言いましたが5分以内にです。5分を過ぎるようであれば、その選手はある程度自在におしっこを出すことができないということで、トーナメントの不安要素となり審査落ちです。また、1人のおしっこを分け合うのも禁止です。成分検査の結果、同じ人物のおしっこが複数の紙コップから検出された場合は、その紙コップを提出した者全てを失格とします」

「2人一組で審査を受けるのはなぜですか?」

説明である程度この審査の目的と概要は把握できたが、一応ミリアは尋ねてみる。

「女子トイレの便器の数の都合です。また、大人数の審査を同時にやると、他の選手の紙コップに自分の尿を紛れ込ませる輩がいます。本人も失格となりますが、失格を覚悟で予選をかき回すのが目的の者がいないとも限りません。まあ、選手に実際の危険がないようにトイレの外に警備員はいますがね。男性なのでトイレ内には入れません」

「なるほど。では行ってきます」

説明は終わりだ。ミリアは紙コップを受け取り、早速部屋を出てトイレに向かおうとする。
忍花が後ろから付いてくるが、彼女の口数が異様に少ないのが気になった。
ドアの横に立つ警備員に軽く会釈して、2人でトイレに入る。洗面台には運営が持ち込んだらしい大きな時計が置かれており、残り時間を表すのであろう4分51秒という表示がされていた。
入ってきた忍花がすぐに震えだす。

「あ、あば、あばばばばば」

「どうしたのさ忍花。芥川龍之介の小説みたいな声を出して」

白目を剥いて面妖な声を上げている。様子がおかしい。心配してミリアは声をかけた。

「し、審査の要件がおしっこを5分以内に出せるかとは……まずいのでござる。拙者、逆のことを考えていたのでござる」

まだ話が見えてこないミリアは怪訝な顔をした。

「それがどうしたのさ」

「拙者はその、先ほど廊下で『滝枯らし』の経穴を自分に突いてござって……当分の間、おしっこできないのでござる」

「うへえ」

忍花は審査を、おしっこを漏らした方が負けといういつもの試合のルールに基づくものと早合点したらしい。
『滝枯らし』は一定時間に筋肉を硬直させておしっこをできなくする経穴を突く忍法で、前のカオリとの戦いでも用いていた。先ほどどこかへ行っていた間にそれを自らに突いてきたようだ。それならば5分以内のおしっこはとても無理だ。

「無効にする経穴とかはないの?」

「一度硬直した筋肉が再びほぐれるには、時間をかけるしかないのでござる。あぁ、拙者どうすれば……うぇっ、うぇっ」

嗚咽が混じる忍花。呆れるミリアだったが、一計を案じた。この方法ならばもしかしたら審査を通らせてあげられるかもしれないと考えた。

「忍花、ちょっと個室で待ってな。いい考えがある」

「ほ、本当でござるか。まさかミリア殿のおしっこを分けてくれるのでは」

「それだと成分分析であたしまで失格になるでしょ。いいから、あたしがおしっこを取り終わったらなんとかしてあげる」

「み、ミリア殿ぉ……」

泣きそうな顔の忍花だが、5分の制限時間が迫っている。ミリアはまず自分のおしっこを確保するため個室に入ることにした。紙コップを持って女子トイレの個室に入った。さっさと下着も下ろして便器に腰掛ける。

「ふうう~~っ♡」

ちょろ、ちょろちょろおおっ……♡

「あんっ、あんんんっ♡」

尿の出は順調だ。出始めの尿は取らず、真ん中ぐらいのところからコップに取っていく。今回は関係ないだろうが検尿のルールだ。我慢していたために出し尽くすのは気持ちよかった。ミリアは大きく息を吐く。

「よし、これであたしのは完了だ」

紙コップを入り口の洗面台に置いて慌てて隣の個室へ行く。忍花は同じ表情のまま立って待っていた。

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