「やった、やったあっ!」
女子プロレスラーのセシルを打ち破り盛大に放尿させたミリア。ミリアの策によって驚いて漏らしかけている相手の後頭部を蹴るというえげつない攻撃で気絶させた。
とはいえミリアにとってはこのおしっこ我慢キャットファイトリングでのめでたい初勝利である。喜びを爆発させてリングの上を跳びはねていた。もっともセシルの尿による水たまりだけはうまくかわしていたが。
「ミリアちゃん、やったね、あたしも自分のことのように嬉しいよ」
リングの下で応援していたレズセックスパートナーであるカオリも祝福する。ともに努力し作戦を練って臨んだ今日の試合でどちらも勝ったのだ。こんなに嬉しいことはなかった。
「そうでござるなあ、拙者も目頭が熱くなってきたでござる」
ちょうどそのカオリに敗れた相手であるくノ一の忍花(しのはな)が腕を組んでうんうんと頷く。カオリは自分の感動に水を差されたような気分で引きつった顔をした。
「いや、あんた関係ないっていうか、あたしに負けてるじゃん」
「まあ、堅いことは言うなでござる。それよりお主たち、今日の夜は、その」
急にもじもじとし始めた忍花だ。さきほどリング上でオナニーを始めて控え室に連れて行かれていた彼女。その後酒を飲んでシャキッとしたというのが本人の弁だ。アル中の人のようなことを言う。カオリは引きつった顔のままだ。
「えーと、夜はあの、その、2人でお祝いのセックスとか、するでござるか」
少し頬を赤らめて忍花が言った。恥も外聞もないことを言ってくるので呆れるが、そもそも観客の前で激しくミリアとキスをしたのはカオリ自身であった。いわば公然の仲なのだ。カオリは少し考え込む。確かにこの流れだとどちらかの部屋でお祝いのお酒でも飲んで、その流れで激しくやっちゃうことになるだろうと思った。
「うん、まあ、すると思うよ……」
さすがに恥ずかしくなってきた。リングの上で観客に投げキッスを披露しているミリアをチラリと見ると、だんだんと胸が熱くなってきた。少し股間がジュンッとなったのを感じる。絶対に盛り上がる夜になることは間違いなさそうだ。
「いいなあ、いいなあでござる。拙者も、そう、拙者も混ぜていただきたいでござるよ」
ついに本音が出た感じの忍花だ。そういえば試合の前もミリアとカオリのキスを見て興奮していた。実はこのくノ一は友達があまりいないのだろうか。誘ってやってもいいような気もしたが、それは今日ではあるまい。
「おい、なんだ!?」
「えっ!? どうした?」
リングの上で何かあったらしく、観客がざわめき始めた。カオリは忍花を放っておいてリングの方に注目する。注目の的はミリアではないらしく、戸惑った顔でカオリの方に近づいてきた。
「ええっ!?」
カオリは驚いて声を上げた。
「あなたたち、どうして……」
自らのおしっこの海に横たわっていたセシル。失神から目覚めたようで上半身だけを起こしてきょとんとしている。そんなセシルに駆け寄るいくつもの姿があったのだ。
「セシル先生、負けちゃやだあ」
「こんなのやだよ、セシル先生は最強なのに」
「おしっこめっちゃよかったよ!」
なんと幼稚園ぐらいの子どもたちが次々とリングに上がり、おしっこまみれのセシルに駆け寄っていくのだ。セシルは女子プロレスラーと幼稚園の保育士の二足のわらじを履いていたのだった。それぞれが泣きながら思い思いのことを叫んでセシルの方へ向かう。一部おかしなことを言っている子もいるようだが。
「ごめんね、先生頑張ったけど、負けちゃったんだ……おしっこも漏らしちゃったし」
集まってきた子供たちのそれぞれの頭をなでながらセシルは言う。いつの間にかセシルの目からも涙がこぼれ始めていた。小さな子たちの応援に応えられなかったのが痛恨の極みのようだ。だが、それを責める子どもたちはいない。
「せんせー、今度は絶対勝ってね」
「セシル先生、あたしと特訓しようよ」
「先生のおしっこ飲みたい」
みんなセシルの戦いぶりに心を打たれていたのだ。セシルは励ましに頷いて、その場ですっくと立った。子どもたちの熱いまなざしが彼女をよみがえらせたのだ。美しい光景がリング上で繰り広げられていた。
「なんか……勝ったのに主役を奪われちゃったかな」
ミリアがぽつりと漏らす。ちょっと残念な展開だが、自分たちらしい。カオリはクスッと笑った。
「ふふ、私たちは私たちでお祝いしましょうよ」
ミリアも少し笑ってリングから降りた。そしてカオリと手をつないで控え室へ消えていく。時折見つめ合うその目はまさに恋人同士だった。すでに今晩のことに意識を切り替えているようだ。
忍花だけがリング脇に残り、どこへ行くべきか、この後どうすべきか思案していた。カオリに混ぜてもらえれば今夜は3Pだったのに、お願いへの返事もなく去って行かれてしまった。忍花はにわかに機嫌を悪くした。
「いや、そもそもこういう試合を幼稚園児が見に来ちゃいけないでござるよな! 教育にいいわけがないでござる!!」
観客たちみんなが思っていたことを大声で代弁し、憤怒の表情で忍花も廊下の向こうへ消えていった。
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