女子プロレスラーの頼則セシル(よりのり・せしる)との対戦。セシルの圧倒的なパワーの前に投げられたり腹に強烈なパンチを食らったりとダメージを受け続けている。
しかしまだ肝心のお漏らしはしていない。気絶した場合には負けとなり後ほど観客の前で放尿させられることにはなるのだが、まだまだ戦いを続ける気力はあった。
「うりゃ、うりゃあっ!」
ミリアは自分より一回りほど大きい体格のセシルの懐に飛び込み、あごめがけて掌底を放つ。
ガッ!
ヒットした。しかし脳を揺らすどころか出鼻をくじくこともできない。そのまま腕をつかまれてリングに向かって横に投げられる。
「ぐうっ!」
倒れたミリアだがまた立ち上がる。投げた方のセシルが驚くほどの復帰の早さ。
(こいつ、こんなに粘る選手だったっけ)
セシルが考える間もなくミリアがパンチを繰り出してくる。
「くっ、しつこいっ」
よけたり腕でガードしながらセシルはあることに気づいた。顔面への攻撃が多いのである。
腹にパンチを食らっても平然としていたセシルに対して、そこへの攻撃を諦めたらしいミリア。次に蹴りで膝関節を狙ってきたが、脚を捕まれて投げられてからはそれも控えるようになっていた。
そうなると効果的に攻撃できる場所がなくなっていく。悩んだ末の顔面攻撃であろうか。セシルはそう分析した。

「でえいっ!」
セシルが水平チョップを繰り出すが、ミリアはバックステップでかわす。そしてセシルの腕が戻る前にまた接近し、頬やあごにパンチを繰り出してくる。
数発被弾したものの、少々痛いだけで意識が飛んだりすることもない。またつかもうと手を伸ばしたが、察したミリアが左右に動いてよけた。
互いに決定打がないが、一撃で大ダメージを与えることができるセシルに比べてミリアの顔面への攻撃は観客たちも意図がつかみかねていた。このままではいずれ捕まれて投げられたらミリアの負けだろうし、戦いの時間もかかってきて尿意も限界が近いはずである。
「ミリアーっ! しっかり攻めろやーっ!」
観客からヤジが飛ぶ。それがきっかけというわけでもないだろうが、ミリアが久々にローキックを繰り出した。すでに脚への攻撃はないものだと判断していたセシルの左ももにクリーンヒットする。
セシルが体勢を崩してからのミリアが速かった。
「せやあっ!」
ミリアが2本の指を突き出してセシルの顔面を狙う。目突きではなかった。指の先にあったのは鼻の穴だ。
ズッ!
目だけを慌てて警戒したセシルはもろに鼻の穴に指を入れられてしまう。鍛えようのない場所への攻撃で痛みが脳天に突き抜けた。視界が涙でにじむ。
そしてミリアが一気に指を引き抜いた。

「うっ、うぐ、こ、このぉおっ……!」
鼻血が出てきてセシルの口元まで血で染めていく。反則ではないがなかなかえげつない攻撃で、数人の観客からブーイングが飛んだ。
「よっしゃ、決まったあっ」
リングの下で見守るカオリが感嘆の声を上げる。
「ほほぉ……動いている相手の鼻の穴に指を入れるとは、なかなかの手練れでござったか」
いつの間にかカオリの横にいたのは、先ほどリング上でオナニーして連れ出されたお漏らしくノ一の忍花(しのはな)だ。アヘ顔で漏らして会場の外へ出て行ったはずだったが、今は正気を取り戻したのか顔に知性が宿っている。忍花に何があったのかも気になるが、カオリは試合の方へ向き直る。無視された形の忍花はがっかりした顔をした。
試合はストップせずにそのまま続行される。
痛みで一瞬おしっこを我慢していたことを忘れたセシルだが、幸いに漏らさずに済んだ。血がまだ止まっていないが、セシルは再び構える。その目は怒りに満ちていた。
「あんた……ひどいことするね。痛くておしっこ漏らすかと思ったよ……いいよ、わかった。それならそういうやり方で勝負しよう」
ドスのきいた声。ミリアの背筋に汗が流れる。
低めに構えたセシルが突進してきた。
「このおっ!」
なぜか攻撃した方のミリアの方に急にアドレナリンが出たのか、前蹴りを低めのタックルを試みたセシルの顔面にぶち当てた。タックルの動きが止まる。そこへまたも顔面へ連打、連打だ。手数の多さで相手に痛みを覚悟する暇を与えない。
まだ先ほどの痛みが残っているはずのセシルの鼻めがけて斜め受けから鉄槌を振り下ろす。
「ごはっ!」
完全に決まった。体格で勝る相手を打撃でどつき回している。追加の鼻血こそなかったが、もはやプロレスの受けの美学など忘れたセシル。ひっかくようにミリアにつかみかかった。
「いたああっ!!」
爪を立てたセシルがミリアの肩を思い切りつかむ。投げるチャンスでもあるはずだが、セシルは殴られた痛みを打撃で返すつもりのようで、よろめいたミリアの腕を引っ張って頬をはたく。
前屈みになるミリアの背中に肘打ちし、腰のあたりを引っ張ろうとしている。綱引きのような動きだ。
「この、この、あんたなんかにっ!」
セシルのこの素人のような動きは洗練さのかけらもないが逆に本能むき出しの攻撃を見て観客が興奮し始めた。
そしてミリアの背後に回り込み、首に腕を回す。そして徐々に締め上げていく。
「ぐ、ぐふ、ぐふっ」
絶体絶命の状況だが、ミリアの口元には笑みが浮かんでいた。



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